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1期8話
1期8話「しずく、モノクローム」

しずく「ある街の ある劇場に 一人の少女がいました」

しずく「彼女の夢は この街一番の歌手になること」

しずく「そして たくさんの人に 歌を届けること」

しずく「あなたの 理想のヒロインになりたいんです」


黒しずく「無理だよ」

黒しずく「私の歌なんて 誰にも届かない」

黒しずく「本当は分かっているのでしょう?」

黒しずく「あなたは 私だもの」

しずく「あっ…」



歩夢「えへへ」

侑「かわいいよ 歩夢!」


果林「フフッ」

侑「果林さんステキ!」


愛「イエーイ!」

侑「愛ちゃんサイコー!」


侑「みんな すっごくいいよ!」

かすみ「はいは〜い! 次はかすみんの番です〜」

かすみ「えへへ〜」


新聞部員「では次に 桜坂さんがどんなスクールアイドルを目指しているのか 教えて下さい」

しずく「私は 愛されるスクールアイドルを 演じたいと思っています」

新聞部員「…と いいますと?」

しずく「皆さんにとって理想のアイドルを想像して その子になりきるんです」

新聞部員「では 今この瞬間も 桜坂さんは理想のスクールアイドルを演じている ということですか?」

しずく「はい」

新聞部員「なるほど」

新聞部員「演劇部に所属している 桜坂さんらしいアイドル像ですねえ」

しずく「フフフッ」

新聞部員「そういえば今度 藤黄学園との 合同演劇祭が開催されるそうですが…」

しずく「ええ 藤黄学園と虹ヶ咲が それぞれ別の演目で公演を行うんです」

新聞部員「虹ヶ咲の主役に抜擢されたのは 桜坂さんだそうですね」

新聞部員「是非とも 校内新聞を読む生徒たちに ひと言お願いします」

しずく「精いっぱい演じますので 是非見に来て下さいね」



しずく「こ… 降板ですか!?」

演劇部部長「今回の役は しずくとはちょっと違ったみたいだから…」

しずく「ダメなところがあれば言って下さい! 私 頑張りますから!」

演劇部部長「この役は 自分をさらけ出す感じで演じてほしかったの」

しずく「さらけ出す…?」

演劇部部長「役柄も歌手って設定だし スクールアイドルのしずくなら 適任かなって思ったんだけど…」

しずく「もう一度 チャンスを下さい!」




いこう! 明日へ

虹のMelodies


青空 雨あがり

希望の 風吹いて(Blowing)

予感のなか 踏み出すよ 最初の一歩


世界が きらめいて

ココロに 湧き上がる(Feeling)

「いま駆け出したいんだ…!!」

(Move on!  Move on!)


重ねあう 小さなメロディ(Our Colors)

弧を描いてほら 街中に響くよ

(Reaching for far blue sky!)

いっしょに歌おう!


溢れだす この気持ち

胸の奥 もう止まらない

虹色Passions!

勇気に染まるColors


果てしない 空のむこう

ミライへと 橋をかけよう


高鳴る シンパシー

キセキ咲いてくよ

いこう! 明日へ

光れMelodies


そうきっと ひとりじゃないよ

いつもみんな いるから

夢と夢 繋いでいこう



しずく「私 歌いたいの」

しずく「たくさんの人に歌声を届けたい」

しずく「私が歌に込めるのは 喜びと感動と少しの熱狂!」

しずく「あ…」


かすみ「ん? しず子?」



侑「ジャーン!」

侑「みんなの初めてのインタビューが 校内新聞に載りました〜!」

歩夢「わあ!」

愛「みんなめっちゃいい感じじゃ〜ん!」

果林「結構評判いいみたいよ」

エマ「またインタビューしてもらえるといいね」

せつ菜「今度は 練習風景をメインに取材してもらう というのはどうでしょう?」

しずく「それ すごくいいアイデアです せつ菜さん!」


かすみ「なんだ いつもどおりじゃん」


侑「ねえ 演劇部の公演のことも載ってるよ!」

愛「どれどれ?」


しずく「あっ…」


かすみ「あ…」


侑「それにしても 主役なんてすごいよね〜!」

彼方「彼方ちゃん 絶対見に行くよ〜」

しずく「はい ありがとうございます」



かすみ「ん〜…」

璃奈「しずくちゃんの様子がおかしい?」

かすみ「うん 何かね いつものしず子よりも しゅ〜んって感じで…」

璃奈「ん〜… そうだったような… そうじゃなかったような…」

色葉「そういえば… 主役 降ろされちゃったって聞いたけど…」

かすみ「え!? 何それ!」

浅希「演劇部の子が言ってたの」

浅希「それで もう一回 オーディションがあるって…」

かすみ&璃奈「あ…」



黒しずく「私の歌は誰にも届かない」

黒しずく「子供の頃のこと 覚えてる?」

黒しずく「みんなと少しだけ違う」

黒しずく「ただそれだけのことだったけど 私はいつも不安だった」

黒しずく「誰かに変な子って思われたら? 嫌われたらどうしよう…」

黒しずく「いつもそんなふうにおびえていた」

黒しずく「だから 本当の自分を隠すようになった」

黒しずく「そしたら すごく楽になれた」

黒しずく「あの日からずっと 私はうその私のまま」

黒しずく「自分を偽っている人の歌が 誰かの心に届くわけがない」


しずく「ううっ…!」


黒しずく「そうでしょう?」


しずく「うう…」



しずく「あっ…」

かすみ「しず子 確保〜!」

しずく「か… かすみさん!? なに?」

かすみ「りな子!」

璃奈「ラジャー」

璃奈「璃奈ちゃんボード… 『拘束』!」

しずく「うわあっ!」

しずく「ちょっ… ちょっと これじゃ前が…」

かすみ「それじゃ しゅっぱ〜つ!」

しずく「あああっ!」

璃奈「お〜!」

しずく「え? えええええ!?」



かすみ&璃奈「おおおおお!」

璃奈「これが 伝説の…」

しずく「ほんとに食べるの?」

かすみ「マウンテンパンケーキ 0勝5敗のかすみんが 二人に完食の極意を教えてあげる!」

璃奈「勝ててない」

かすみ「ひたすら食べ続けるべし!」

かすみ「いざ かかれ〜!」

璃奈「いただきます!」

かすみ「はむっ」

かすみ「ん〜! おいしい〜!」

璃奈「ふわふわすぎる!」

しずく「あ… あっ」

かすみ「ほら しず子も!」

しずく「はむっ ん…」

しずく「おいしい!」

かすみ「でしょ〜?」

璃奈「『ハッピー』!」

かすみ「いっくぞ〜! 目指せ完食〜!」


かすみ, しずく, 璃奈「はあ… フフフッ」

璃奈「璃奈ちゃんボード 『おなかパンパン』」

かすみ「初勝利 イエーイ!」

しずく「やったね」

璃奈「イェイ」



かすみ「かわいい〜!」


璃奈「おお これは…!」


しずく「この子 うちのオフィーリアに似てます〜」


かすみ「撮るよ〜」

しずく「フフッ」

璃奈「うん」



かすみ「う〜ん…」

かすみ「ん〜 どうしよっかな〜 かわいいかすみん迷っちゃう」


しずく「あ…」

璃奈「好きなの? 昔の映画」

しずく「あっ」

璃奈「もしかして しずくちゃんが演技を始めたのって こういうの見てたから?」

しずく「そう… かな それもあるけど…」

しずく「私ね 演じてる時が一番堂々としていられるの」

しずく「誰の目も気にならないし…」

しずく「自分が 桜坂しずくだってことを 忘れられるの」

璃奈「あ…」

璃奈「自分が 嫌なの?」

しずく「ご… ごめんね 変な話して」

しずく「忘れて?」

かすみ「あ〜!」

しずく「ああっ!」

かすみ「また暗い顔してる〜!」

かすみ「スマイルだよ しず子! えへっ」

しずく「か… かすみさん…」

かすみ「今日はやなこと全部忘れて パーっと遊ぼ?」

かすみ「それで元気出たら オーディション頑張って 主役取り返そう!」

しずく「あっ…」

しずく「知ってたんだ…」

かすみ「うん…」

かすみ「でも 別にないしょにしなくてもいいじゃん」

かすみ「私たち応援するし!」

かすみ「それに もししず子が落ち込んでるなら 話を聞くぐらい…」

しずく「大丈夫!」

かすみ「えっ?」

しずく「心配しないで 私は平気だから」

しずく「二人ともありがとう!」

璃奈「しずくちゃん…」

しずく「今日はもう帰らなきゃ」

しずく「じゃあね」


かすみ&璃奈「あ…」



黒しずく「やっぱり怖いんだ? 本当の自分を見せることが」

しずく「だって…!」

黒しずく「嫌われたくない… そうでしょ?」

黒しずく「私 歌いたいの」

黒しずく「みんなの心に届く歌を」

黒しずく「そのためには 自分をさらけ出さなきゃ」

黒しずく「受け入れて」

しずく「あ… あっ…」



しずく「できないよ… さらけ出すなんて…」

しずく「嫌い… こんな私…」



璃奈「返事 来た?」

かすみ「演劇の自主練だってさ」

璃奈「それじゃあしょうがない」

かすみ「あ〜あ! せっかく一緒にお昼食べようと思ったのに〜」

かすみ「知らなかったあ…」

かすみ「しず子があんな頑固だったなんて!」

かすみ「ほんと どうしちゃったんだろ…」

璃奈「きっと 今のしずくちゃんも しずくちゃんだよ」

かすみ「ふえ?」

璃奈「私も ちょっと同じだったから分かるんだ」

璃奈「自分のことが嫌な気持ち」

かすみ「あ…」

璃奈「私の時は 愛さんが ぐいって引っ張ってくれた」

璃奈「みんなが 励ましてくれた」

璃奈「だから ライブができた」

璃奈「私には 愛さんがいた」

かすみ「あ…」

璃奈「しずくちゃんには…」

かすみ「あっ…!」

かすみ「私 行ってくる!」

璃奈「『ファイト』!」



しずく「あめんぼ あかいな アイウエオ」

しずく「うきもに こえびも およいでる」

しずく「かきのき くりのき カキクケコ」

しずく「きつつき こつこつ かれけやき」

しずく「ささげに すをかけ サシスセソ」

しずく「そのうお あさせで さしました」

しずく「たちましょ らっぱで タチツテト」

しずく「トテトテ タッタと…」


かすみ「見つけた!」

かすみ「ハァ… ハァ…」

しずく「かすみさん…?」


しずく「ど… どうしたの?」

かすみ「どうって そりゃあ…」

かすみ「昨日… 変な感じで別れちゃったじゃん?」

かすみ「だから… どうしてるかなあって…」

しずく「ごめんね 心配かけて」

しずく「でも 私は本当に大丈夫」

しずく「オーディションだって… あっ…」


かすみ「じぃ〜…」


かすみ「目 ちょっとはれてるよ」

しずく「あっ…」


かすみ「しず子が頑固キャラだってことはよ〜く分かったよ」

しずく「え…?」

かすみ「でも…」

しずく「あっ…」


かすみ「そんな顔で必死に隠そうとしないでよ!」

かすみ「私としず子の仲でしょ!?」

しずく「あ…」


しずく「今度の役ね 自分をさらけ出さなきゃいけないんだって」

しずく「でも 私にはできない」



しずく「私… 小さい頃からずっと 昔の映画や小説が好きだったの」

しずく「でも そんな子は私しかいなかったから… 不安だった」

しずく「誰かに『変なの』って顔される度 嫌われたらどうしようって…」

しずく「そのうち 他のことでも 人から違うなって思われることが怖くなって…」

しずく「だから 演技を始めたの」

しずく「みんなに好かれる いい子のふりを…」

しずく「そしたら… 楽になれた」


かすみ「しず子…」


しずく「私… やっぱり… 自分をさらけ出せない…!」

しずく「それが 役者にもスクールアイドルにも必要なら…」

しずく「私は… どっちにもなれないよ!」


しずく「表現なんてできない…」

しずく「嫌われるのは… 怖いよ…!」



かすみ「な〜に…」

しずく「あ…」

かすみ「甘っちょろいこと言ってんだあああ!」


しずく「んっ!」


しずく「うわっ!」

かすみ「嫌われるかもしれないからなんだ!」

かすみ「かすみんだって こ〜んなにかわいいのに 褒めてくれない人がたくさんいるんだよ!?」

かすみ「しず子だって かすみんのことかわいいって言ってくれたことないよね!?」

かすみ「しず子はどう思ってるの!」

しずく「え? え〜と…」

かすみ「かわいい? かわいくない!?」

しずく「か… かわいいんじゃないかな?」

かすみ「ほら 言ってくれたじゃん!」

かすみ「しず子も出してみなよ!」

かすみ「意外と頑固なところも 意地っ張りなところも ほんとは自信がないところも全部!」

しずく「それ… 褒めてない」

かすみ「もしかしたら しず子のこと好きじゃないって言う人もいるかもしれないけど!」

かすみ「私は 桜坂しずくのこと 大好きだから!」

しずく「あっ…」

かすみ「だから 心配しなくても…」


かすみ「帰る!」

しずく「あっ ちょっと…」

かすみ「かすみんにここまで言わせたんだから 絶対に再オーディション合格してよねっ!」



しずく「ぷっ! フフフッ アハハハハッ!」

しずく「アハッ… ハァ… フフフッ」

しずく「ハァ…」



美咲「姫乃 この舞台の主役の子 虹ヶ咲のスクールアイドルらしいわよ」

姫乃「そうなんですね」



しずく「よし!」



エマ「しずくちゃん オーディション受かってよかったね」

歩夢「何か 私の方が緊張してきちゃった…」


果林「始まるわよ」


かすみ(頑張れ しず子!)



しずく「ある街の ある劇場に 一人の少女がいました」

しずく「彼女の夢は この街一番の歌手になること」

しずく「そして たくさんの人に 歌を届けること」

しずく「あなたの 理想のヒロインになりたいんです」


しずく「待って下さいオーナー! どうして私だけ出番がないんですか!?」

オーナー「残念だけど あなたの歌の評判がよくないの」

オーナー「もううちの劇場に立たせてあげることはできないわ」

スタッフ「ねえ 待って!」

スタッフ「もう一度オーナーに頼んでみようよ チャンスを下さいって!」

しずく「もういいの!」


黒しずく「そんなに怖いの?」

黒しずく「本当の自分を見せることが」

黒しずく「待って!」


黒しずく「私… それでも歌いたいよ…!」


しずく「あ…」


しずく「ずっとあなたから目をそらしていた」

しずく「でも 歌いたい その気持ちだけはきっと真実!」

しずく「今まで… ごめんなさい」


しずく「これが私」

しずく「逃れようのない 本当の私!」

黒しずく「嫌われるかもしれない」

しずく「でも 好きだって言ってくれる人もいた」

しずく&黒しずく「だから この小さなステージで もう一度始めよう」



『Solitude Rain』

雷鳴が胸に鳴り響いて

閉じ込めていた感情が 溢れだしていく」

もう 見失ったりしない

私だけの思いを


そらから 舞い落ちる雨粒が

ぽつり ぽつり 頬伝って


知らない うちに

心覆っていた仮面を

そっと洗い流していくの


胸の奥 変わらない

たったひとつの 思いにやっと

気づいたの


目覚めてく強く

裸足で駆け出していこう

どんな 私からも逃げたりしない


迷いも不安も全部

ありのまま抱きしめたなら

まぶしい あの空へと

飛び出すよ



演劇部部長「フフッ」



新聞部員「すばらしかったです!」

新聞部員「まさに スクールアイドルの桜坂しずくさんにしかできない舞台でしたねえ!」

しずく「ありがとうございます!」

新聞部員「役者 そしてスクールアイドルとして 何か メッセージはありますか?」

しずく「本当の私を 見て下さい!」




ゆっくりと走るこの道 何かが生まれかけてるんだ

それを伝えたいよ 君へと伝えたいんだ


毎日見上げる空の 青さも 季節ごと変わって

決まりはないね 自由に 描いてと 誘われてるよ


あせらないで 行こう!

ときめく 時間を楽しんで もっと!

みんな 自分が好きなことを 追求しちゃおう


どこに向かうか まだ分からないけど

面白そうな未来が待ってると

笑いあえる 君がいれば

嬉しい 今日も ありがとう


さあ これからはそれぞれの地図マップ

広げたら 気軽に飛び出そう

夢見て 憧れて また夢が見たいんだ

見たい、見たいんだ!



美咲「いいステージだったわね」

姫乃「はい」


姫乃「虹ヶ咲学園 スクールアイドル同好会…」

姫乃「面白いですね」



果林「次回 『仲間でライバル』」